「補助金は返済不要」とよく言われます。融資と違い、補助金は原則として返済の必要がないお金です。

一方で、補助金は申請時に示した事業計画や、交付決定の際に付された条件を前提に交付されます。そのため、約束した要件を達成できなかった場合や、交付後のルールに反した場合には、補助金の一部または全部の返還を求められることがあります。

特に近年の主要な設備投資系補助金の中には、事業終了後3~5年間の賃上げや事業場内最低賃金の要件が設けられ、未達の場合の返還ルールが公募要領に明記されているものがあります。

この記事では、2026年10月2日時点の最新の公募要領等をもとに、補助金の返還が求められ得る主なケースと、申請前に確認しておきたいポイントを整理します。

  • 補助金が「原則返済不要」とされる理由と、返還が求められ得る場合
  • 中小企業省力化投資補助金(一般型)、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の賃上げ要件と返還の考え方
  • 「目標未達=全額返還」とは限らない理由
  • 補助金で購入した設備の売却・廃棄(財産処分)のルール
  • 事業終了後の報告義務と、申請前のチェックポイント

補助金は原則として返済不要です

融資との違い

金融機関からの融資は、借りたお金を利息とともに返済することが前提です。これに対して補助金は、国や自治体などが政策目的に沿った事業者の取り組みを支援するために交付するもので、原則として返済の必要はありません。

たとえば小規模事業者持続化補助金の公募要領にも、支払を受けた補助金は「原則として、融資のように返済の必要がありません」と記載されています。

「無条件でもらえるお金」ではありません

ただし、補助金は無条件に受け取れるお金ではありません。国の補助金は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金等適正化法)や、各補助金の交付規程に基づいて交付されます。交付決定には条件が付されていて、補助事業者には主に次のような義務があります。

  • 交付決定の内容に沿って補助事業を実施すること
  • 申請時に策定した事業計画(賃上げなどの目標を含む)に取り組むこと
  • 補助金で取得した財産を適切に管理すること
  • 事業終了後も、定められた期間は状況を報告すること

これらを守れなかった場合に、交付決定の取消しや補助金の返還といった措置が定められています。つまり補助金は、「返済は不要。ただし、約束した内容とルールを守る必要がある」お金と考えると分かりやすいでしょう。

返還が問題になる場面は、大きく次のように分けられます。具体的な取扱いは制度・公募回によって異なります。

ケース典型例主な取扱い(制度により異なる)
賃上げ等の要件未達1人当たり給与支給総額の目標未達、事業場内最低賃金の水準未達制度ごとの計算式による一部または全部の返還。返還を求めない場合も規定されている
賃上げに関する特例の要件未達大幅賃上げ特例・賃上げ特例で上乗せを受けたが要件を満たせなかった上限引上げ分の返還(基本要件も未達なら、その分の返還も)
財産処分補助金で購入した設備を、承認を得ずに売却・譲渡・廃棄・貸付・担保設定・目的外使用原則として事前承認が必要。処分内容等に応じて残存簿価相当額等の納付を求められる場合がある。無承認の場合は交付決定取消しの対象となり得る
補助事業の不実施・中止等期限内に完了しない、実績報告を出さない、事業を中止・廃止する補助金が支払われない/交付決定の取消し(支払後なら返還)
報告義務の不履行効果報告・事業化状況報告を提出しない、虚偽の数値を報告する交付決定の取消し・返還等の措置の対象となり得る
虚偽申請・不正受給架空経費、水増し請求、実態のない取引、虚偽の申告交付決定の取消し、加算金を付した返還、事業者名等の公表、罰則の対象となり得る
収益納付補助事業で収益が生じた場合に補助金の一部を納付制度によって有無が異なる(求めない制度もある)

このうち、事業者が誠実に事業に取り組んでいても起こり得るのが「賃上げ等の要件未達」です。次の章から詳しく見ていきます。

賃上げ要件の基本的な考え方

最近の設備投資系の補助金では、補助事業終了後3~5年の事業計画期間中に、次のような賃金の目標を達成することが要件とされています。

  • 1人当たり給与支給総額を、年平均成長率で一定以上増加させること
  • 事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、地域別最低賃金より一定額以上高い水準に保つこと

注意したいのは、達成の判定に使うのは公募要領に書かれた基準値(たとえば年平均3.5%)そのものではなく、申請者自身が基準値以上で設定し、従業員等に表明した目標値だという点です。たとえば基準値を上回る4.5%を目標にした場合は、4.5%に対する達成状況で判定されます。

中小企業省力化投資補助金(一般型)の場合

第8回公募の公募要領(2026年9月18日改訂)では、基本要件として次の3つ(従業員21名以上の場合は一般事業主行動計画の公表を加えた4つ)が定められています。

基本要件内容
労働生産性事業計画期間に、労働生産性を年平均成長率4.0%以上向上させる
1人当たり給与支給総額事業計画期間終了時点に、年平均成長率3.5%以上増加させる(自ら設定した目標値を達成する)
事業場内最低賃金事業計画期間中、毎年、事業実施都道府県の最低賃金+30円以上の水準とする

※最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例を受ける事業者は、事業場内最低賃金の要件は適用されません。

公募要領では、要件未達の場合の返還について、おおむね次のように定められています。

  • 1人当たり給与支給総額:事業計画期間終了時点で目標が未達の場合、達成率に応じて返還を求める。
    • 返還額 =(補助金交付額 - 補助上限引上げ額)×(1 - 達成率)
    • 達成率 = 事業計画終了時点の年平均成長率 ÷ 申請時に掲げた目標値
    • 年平均成長率がゼロまたはマイナスの場合は全額返還
  • 事業場内最低賃金:事業計画期間中の毎年3月末時点で未達の場合、補助金額を事業計画年数で除した額の返還を求める。
  • 大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例(給与支給総額+6.0%以上・事業場内最低賃金+50円以上):いずれか一方でも未達の場合、補助上限額の引上げ分について返還を求める。基本要件も未達であれば、基本要件に基づく返還も求められる。

また、次の場合は上記の返還を求めないとされています。

  • 付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として営業利益が赤字の場合など(給与支給総額は「事業計画期間の過半数が赤字」、事業場内最低賃金は「当該事業年度が赤字」)
  • 天災など、事業者の責めに帰さない理由がある場合
  • 再生事業者(中小企業活性化協議会等の支援を受けて再生計画を策定中・策定済の事業者として申請した者)は、基本要件未達の場合の返還要件が免除される

なお、労働生産性の目標(年平均4.0%以上)も基本要件として取り組む必要がありますが、第8回公募要領の「基本要件未達の場合の補助金返還義務及び免除要件」で返還の対象として定められているのは、1人当たり給与支給総額と事業場内最低賃金(と大幅賃上げ特例)です。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の場合

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、2026年度に始まった制度です。旧「ものづくり補助金」や旧「中小企業新事業進出補助金」とは別の補助金なので、旧制度の解説記事の内容をそのまま当てはめないよう注意が必要です。

第1回公募の公募要領(1.3版、2026年9月28日)では、基本要件のうち次の2つに「補助金返還義務あり」と明記されています。

要件内容未達の場合の返還
賃上げ要件事業計画期間(3~5年)に、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の目標値を設定し、最終年度に達成する補助金交付額 ×(1 - 最終年度の年平均成長率 ÷ 目標値)。ゼロ以下は全額返還
事業場内最賃水準要件事業計画期間中、毎年、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする未達の年度ごとに、補助金交付額 ÷ 事業計画期間の年数

返還を求めない場合として、省力化(一般型)と同様に「付加価値額が増加していない、かつ企業全体として営業利益赤字の場合(賃上げ要件は計画期間の過半数、最賃は当該年度)」や「天災など事業者の責めに負わない理由がある場合」が定められています。返還額は交付された補助金額が上限です。

このほか、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金には次のような特徴があります。

  • 目標値の表明が必須:交付申請時までに、設定した目標値を全従業員または従業員代表者に表明する必要があります。表明していなかった場合は、交付決定を取り消し、補助金全額の返還を求めるとされています。
  • 最終年度で判定:公式FAQでは、賃上げ要件は最終年度終了時点で判定するため、途中の年度で目標値を下回っても、最終年度に達成していれば返還の対象にはならないと説明されています。一方、事業場内最低賃金は毎年度判定されます。
  • 賃上げ特例(給与支給総額+6.0%以上・事業場内最低賃金+50円以上)で補助上限の引上げを受けた場合、いずれか一方でも未達のときは、引上げ分の全額の返還に加えて、基本要件部分の返還も未達成率に応じて求められます。
  • 付加価値額要件(年平均成長率4.0%以上)も達成が求められますが、公式FAQでは、返還の対象となる基本要件は賃上げ要件と事業場内最賃水準要件と説明されています。
  • 故意・重過失による引下げは認められない:申請後に、故意または重過失で給与支給総額を引き下げて要件を達成することは認められないとされています。

なお、第1回公募要領では、省力化(一般型)のような「再生事業者は返還要件を免除する」という記載は確認できませんでした。制度ごとに違いがあるので、必ず申請する制度の公募要領で確認してください。

そのほかの補助金にも賃上げ要件があります

賃上げに関するルールは、上記の2制度に限りません。

  • デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠):150万円以上の補助金を申請する場合などに、3年間の賃金引上げ計画の策定・表明が求められます。事業場内最低賃金の目標が未達の場合は「補助金額を3で除した額×未達となった年以降の年数」、1人当たり給与支給総額の目標が未達の場合は全部の返還を求める場合があるとされています(いずれも返還を求めない場合の規定あり)。
  • 小規模事業者持続化補助金(第20回):賃金引上げ特例は、補助事業の期間内(実績報告時点)に給与支給総額の目標を達成する仕組みです。要件を満たさない場合は、上乗せ部分だけでなく補助金全体が交付されません。事業終了後の返還ではなく、そもそも交付されないという形になります。

公募回によってルールが異なる点に注意

同じ名前の補助金でも、公募回によって要件や返還のルールが変わることがあります。

たとえば中小企業省力化投資補助金の交付規程では、一般型の第1回~第4回公募の事業者と、第5回以降の公募の事業者とで、給与支給総額に関する返還の基準が別々に定められています。

すでに補助金を受けている事業者は、自社が採択された公募回の公募要領・交付規程を確認することが大切です。インターネット上の解説記事は公募回が古い場合もあるため、日付と対象の公募回を確認したうえで参考にしましょう。

賃上げ要件について、省力化(一般型)や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、未達の程度に応じた計算方法が定められています。

給与支給総額は「達成率」に応じて計算されます

数値例

中小企業省力化投資補助金(一般型)で、特例を利用せずに補助金1,000万円の交付を受け、1人当たり給与支給総額の年平均成長率の目標を3.5%とした場合:

事業計画終了時点の年平均成長率達成率返還額の計算
3.5%以上100%以上返還なし
2.8%80%1,000万円 ×(1 − 0.8)= 200万円
1.75%50%1,000万円 ×(1 − 0.5)= 500万円
0%以下―全額(1,000万円)

※実際の返還額は、事務局による報告内容の確認を経て決まります。返還を求めない場合に該当するかどうかも含め、公募要領・交付規程に沿って判断されます。

事業場内最低賃金は「年度ごと」に判定されます

事業場内最低賃金の要件は、事業計画期間中、毎年判定されます。省力化(一般型)や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、未達となった年度について「補助金額÷事業計画年数」の返還が求められます。

たとえば補助金1,000万円・事業計画期間5年の場合、1年度分の未達で求められる返還額は200万円です。

地域別最低賃金は毎年改定されるため、最低賃金の改定に合わせて、毎年、事業場内で最も低い賃金を見直す必要がある点に注意しましょう。パート・アルバイトを含め、雇用形態にかかわらず対象となります(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金FAQ)。

返還を求めないとされている場合

各公募要領では、次のような場合には賃上げ要件・最低賃金要件の未達による返還を求めないとされています(制度ごとに表現・要件が異なります)。

  • 付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として営業利益が赤字である場合(判定期間は要件ごとに異なる)
  • 天災など、事業者の責めに帰さない理由がある場合
  • 省力化(一般型)では、再生事業者として申請した場合

これらは、事業者が自由に選べる「選択肢」ではなく、制度上定められた条件に該当するかどうかが事務局によって確認されるものです。たとえば「赤字なら返還されない」と単純に考えるのではなく、付加価値額の推移なども含めて要件を確認する必要があります。

なお、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の賃上げ特例による引上げ分の返還については、上記のような免除の記載は公募要領上見当たりません。

全額の返還となり得る場合

一方で、次のような場合は全額の返還となり得ます。

  • 1人当たり給与支給総額の年平均成長率がゼロまたはマイナスの場合(省力化(一般型)、新事業進出・ものづくり)
  • 目標値を従業員等に表明していなかった場合(新事業進出・ものづくりでは交付決定取消し・全額返還)
  • 不正受給など、交付決定が取り消された場合

補助金で購入した設備を売却・廃棄してもよい?

処分が制限される財産と期間

補助金で取得した財産のうち、取得価格(または効用の増加価格)が単価50万円(税抜)以上の機械・器具などは「処分制限財産」として、処分が制限されます(省力化(一般型)・新事業進出・ものづくり商業サービス補助金・持続化補助金の公募要領等)。

処分が制限される期間は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を準用して定められます。つまり、設備ごとの法定耐用年数に応じて期間が異なり、「何年たてば必ず自由」と一律に決まっているわけではありません。

省力化(一般型)や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領では、事業計画期間が終わった後でも、法定耐用年数を経過するまでは処分に制限がかかると明記されています。

「処分」に含まれる行為

公募要領・交付規程でいう「処分」には、売却だけでなく次のような行為が含まれます。

  • 補助金の交付の目的に反する使用(補助事業以外の用途への転用など)
  • 譲渡、交換、貸付け
  • 担保に供すること
  • 廃棄

省力化(一般型)の案内資料では、設備が故障した場合の廃棄・交換も財産処分の対象とされています。また新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、取得財産は原則として「専ら補助事業に使用」する必要があり、既存事業に使うと目的外使用と判断される場合があること、事業計画期間中の大企業等への事業承継も目的外使用に当たることが示されています。

処分する場合の手続と納付額

処分制限期間内に処分する場合は、事前に事務局の承認を受ける必要があります。承認を受けた場合でも、処分の内容や理由等に応じて、残存簿価相当額や譲渡額等をもとに、当該財産に係る補助金額を上限として納付を求められる場合があります。

省力化(一般型)では、納付が必要となる場合の金額について「残存簿価相当額又は時価(譲渡額)のいずれか高い額」を基礎とする取扱いが示されています。

承認を受けずに処分した場合は、交付決定の取消しの対象となります。設備の入替えや移転、事業の譲渡、借入れのための担保設定などを検討する際は、実行前に事務局へ確認することが大切です。

なお、省力化(一般型)の交付規程では、災害で使用できなくなった場合の取壊し・廃棄などは、財産処分報告書の提出によって承認を受けたものとみなすことができる旨が定められています。

補助事業を予定どおり実施できなかった場合

多くの補助金は、補助事業を完了して実績報告を提出し、事務局の確認(額の確定)を経てから支払われる精算払いです。そのため、補助事業の実施中に起きた問題は、「返還」ではなく「補助金が支払われない」「減額される」という形で処理されることが多くあります。

そもそも補助対象にならないケース

次のような経費は、返還以前に、そもそも補助対象にならない場合があります。

  • 交付決定前に契約(発注)した経費:省力化(一般型)の留意事項では、いかなる理由でも交付決定前に契約(発注)等を行った経費は補助金の交付を受けられないとされています。
  • 補助対象外の経費、補助事業以外にも使う経費
  • 証拠書類等により支払事実を確認できない経費

交付決定の取消し・返還につながり得るケース

一方、次のような場合は交付決定の取消しの対象となり得ます。補助金がすでに支払われていれば、返還が求められます。

  • 補助事業を完了期限までに完了しなかった場合、期限内に実績報告書を提出しなかった場合
  • 事前の承認を得ずに、補助事業の内容を変更したり、中止・廃止したりした場合(中止・廃止には事前承認が必要です)
  • 補助金で取得した設備を使わずに放置したり、補助目的と異なる用途に使ったりした場合
  • 不注意による焼失・紛失など、善良な管理者の注意義務に反した場合(省力化(一般型)では、故意がなくても取消し・返還に至る場合があるとされています)

また、課税事業者が消費税等仕入控除税額を補助対象経費から減額していなかった場合などには、確定した消費税額に応じた補助金の返還が必要になることがあります。

虚偽申請・不正受給は「計画未達」とは別の問題です

ここまで説明した賃上げ要件の未達などは、誠実に事業に取り組んでも起こり得るもので、公募要領に沿って返還額が計算されます。

これに対し、次のような不正受給は、まったく性質の異なる問題です。

  • 架空の経費や、実態のない取引の計上
  • 見積額・請求額の水増し
  • 申請内容や報告内容の虚偽
  • 自己負担を実質的に減額・無償にするような販売方法(いわゆるキックバック等)

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領では、不正行為が判明した場合、交付決定取消しに加えて、交付済みであれば加算金を課したうえで返還を求め、悪質な場合は事業者名・代表者名・不正内容を公表するとされています。省力化(一般型)の交付規程でも、一定の取消し事由について年10.95%の割合による加算金が定められています。さらに補助金等適正化法には罰則規定もあります。

外部の支援者から「経費を水増しすれば自己負担が減る」といった提案を受けても、応じてはいけません。公募要領でも、こうした業者への注意が呼びかけられています。

補助金は、補助事業が終わった後も、一定期間は事業の成果や賃金の状況を報告する義務があります。賃上げ要件の達成状況も、この報告をもとに確認されます。

制度報告の名称期間主な提出内容報告しない場合の取扱い(公募要領等)
省力化投資補助金(一般型)効果報告事業計画1年目終了後の最初の4月から5年間、毎年決算に基づく数値、賃金台帳など補助金の返還を求めることがある(交付規程上も取消し事由)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金事業化状況・知的財産権等報告補助事業完了年度の終了後を初回に5年間、計6回決算書、賃金台帳など交付決定の取消し・補助金の返還等、以降の応募申請不可
デジタル化・AI導入補助金2026効果報告事業計画期間(3年)など給与支給総額、事業場内最低賃金等の数値、ITツールの継続利用賃金引上げ計画の目標未達と同様に返還を求める場合がある
持続化補助金事業効果及び賃金引上げ等状況報告補助事業終了から1年後売上・賃金等の状況未提出の場合、今後の補助金申請に制限

報告には、決算書や賃金台帳などの客観的な資料が必要です。補助事業に関する証拠書類は、一定期間(省力化(一般型)・新事業進出・ものづくりでは5年間)保存する必要があります。担当者が替わっても対応できるよう、提出期限と必要書類を社内で共有しておくことをおすすめします。

「利益が出たら返す」?収益納付について

「補助金を使った事業で利益が出たら、補助金を返さなければならない」と聞いたことがある方もいるかもしれません。これは「収益納付」という仕組みを指していると考えられます。

収益納付とは、補助事業の成果によって一定の収益が生じた場合に、交付を受けた補助金の範囲内で、その一部を国等に納付する仕組みです。ただし、すべての補助金に適用されるわけではありません。

  • 中小企業省力化投資補助金(一般型):第8回公募要領に「収益納付は求めません」と明記されています。
  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金:第1回公募要領には、収益納付を求める定めは見当たりません(交付規程は2026年10月2日時点で公式サイトに掲載されていないため、公開後に確認が必要です)。
  • 小規模事業者持続化補助金:公募要領に、収益納付による補助金の減額等がなされる場合がある旨の記載があります。

このように制度によって異なるので、「利益が出たら必ず返す」と考える必要はありません。申請する制度の公募要領・交付規程で、収益納付の有無を確認しましょう。

申請前に確認しておきたいチェックリスト

賃上げ・最低賃金

  • 3~5年後まで、設定した給与支給総額の目標値を実現できる見込みがあるか(審査で有利になるからといって、無理な目標値にしていないか)
  • 毎年の地域別最低賃金の引上げを見込んだうえで、地域別最低賃金+30円(特例を利用する場合は+50円)など、申請する制度で求められる水準を維持できるか
  • パート・アルバイトを含め、最も低い時給の従業員の賃金を把握しているか
  • 採用・退職・時短勤務など、将来の人員計画が1人当たり給与支給総額にどう影響するかを検討したか
  • 特例を利用する場合、上乗せ分の追加要件を計画期間を通じて維持できるか
  • 目標値を従業員等に表明する手続を、交付申請までに行えるか

設備・事業の実施

  • 補助金で導入する設備を、法定耐用年数の期間にわたって補助事業に使い続ける予定か
  • 近い将来に、設備の売却・入替え・移転・事業譲渡・担保設定などを予定していないか
  • 交付決定前に発注・契約しないスケジュールになっているか
  • 補助事業の完了期限までに、発注・納品・支払が完了する見込みがあるか

報告・管理

  • 毎年の報告に必要な決算書・賃金台帳等を、期限までに準備できる体制があるか
  • 証拠書類を定められた期間保存できるか
  • 申請した公募回の公募要領・交付規程を保管し、社内で共有しているか

まとめ

補助金は融資と違い、原則として返済の必要はありません。ただし、申請時に示した事業計画や交付決定の条件を前提に交付されるものなので、次のような場合には返還を求められることがあります。

  • 賃上げ・事業場内最低賃金などの要件が未達の場合
  • 補助金で取得した財産を、承認を得ずに処分した場合
  • 報告義務を果たさない場合や、補助事業を適切に実施しなかった場合
  • 虚偽申請・不正受給の場合

一方で、賃上げ要件の未達がそのまま全額返還になるとは限らず、達成率や年度ごとの計算方法、返還を求めない場合の規定が制度ごとに定められています。正確な取扱いは、申請する制度・公募回の最新の公募要領・交付規程で確認することが大切です。

マージパートナーズ行政書士事務所では、公募要領や交付規程を確認しながら、要件の確認や事業計画の整理、申請書類の作成支援を行っています。賃上げ目標の考え方や採択後に必要な手続も含め、申請を検討する段階からお気軽にご相談ください。


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補助金の要件や返還ルールを確認してから申請したい場合

補助金は、制度や公募回ごとに賃上げ要件・返還の計算方法・報告義務が異なります。当事務所では、公募要領や交付規程を確認しながら、要件の確認、事業計画の整理、申請書類の作成支援を行っています。交付申請や実績報告など、採択後の手続についてもご相談いただけます。

※事業計画の作成や電子申請を申請者ご自身で行うことが公募要領で求められている制度では、当事務所は要件確認・構成整理・助言・記載内容の確認等の範囲で支援します。採択や補助金の交付を保証するものではありません。

執筆・監修:マージパートナーズ行政書士事務所 代表 行政書士 落合 洋介(静岡県行政書士会所属)

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度・公募要領は改訂されることがあるため、実際の申請の際は最新の公募要領・交付規程をご確認ください。


参考資料・出典

※2026年10月2日確認

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